・・・と彼の暗記しおる公報の一つ、常に朗読というより朗吟する一つを始めた、「敵艦見ゆとの警報に接し、連合艦隊は直ちに出動これを撃滅せんとす、本日天候晴朗なれども波高し――ここを願います、僕はこの号外を読むとたまらなくうれしくなるのだから――ぜひこ・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・ 彼等は、自分の生存を妨害する犬どもを、撃滅してしまわずにはいられない欲求に迫られてきた。………… ウォルコフは、憎悪に満ちた眼で窓から、丘に現れた兵士を見ていた。 丘に散らばった兵士達は、丘を横ぎり、丘を下って、喜ばしそうに何・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・東郷提督の命令一下で、露国のバルチック艦隊を一挙に撃滅なさるための、大激戦の最中だったのでございます。ちょうど、そのころでございますものね。海軍記念日は、ことしも、また、そろそろやってまいります。あの海岸の城下まちにも、大砲の音が、おどろお・・・ 太宰治 「葉桜と魔笛」
出典:青空文庫