・・・は、こんど砂子屋書房で四六判に改版して出すそうだが、早く出してもらいたいと思っている。売切れのままで、二年三年経過すると、一日に一冊ずつ売れたという私の自慢も崩壊する事になる。たとえば、売切れのままで、もう十年経過すると、「晩年」は、昭和十・・・ 太宰治 「「晩年」と「女生徒」」
・・・ 岩波文庫に古事記が出ていて、岩波さんに云わすと、あれは実は改版したいのだそうだ。余りよくないと出版社の良心から思っているのだそうだが、どういうわけか近頃はあれが出て、刷っても刷っても売り切れるので、と微妙な痛し痒しを経験しているらしい・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・それ等も改版の折に訂正したく思っている。十三 私は誤訳をしたのを、苦心が足りなかったのだと云った。そんなら私がもっと物に念を入れる性質で、もっと時間に余裕のある境遇にいたら、誤訳をしないだろうかと云うに、私はそうは思わない。・・・ 森鴎外 「不苦心談」
・・・ビイルショウスキイの本もウルマイステルの事を取り入れて改版せられたが、その本は私が文芸委員会へ作者伝を出した日までには、まだ舶載せられていなかったのである。 右のファウスト考とファウスト作者伝とは訳本ファウストと同じ体裁にして訳本を発行・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫