・・・ 悲しいとき涙腺から液体を放出する。おかしいとき横隔膜が週期的痙攣をはじめる。これも何か、もっとずっと悪い影響を救うための安全弁の作用をしているに相違ない。それで医術がもっともっと進歩すると、精神のけがでもこれら天然の妙機を人工的に幇助・・・ 寺田寅彦 「鎖骨」
・・・昔ニュートンは光を高速度にて放出さるる物質の微粒子と考えた。後にはエーテルと称する仮想物質の弾性波と考えられ、マクスウェルに到ってはこれをエーテル中の電磁的歪みの波状伝播と考えられるに到った。その後アインスタイン一派は光の波状伝播を疑った。・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
・・・として放出したものと認めるのであります。それは、ともかくも「吾人は意識の連続を求める」と云う事だけを事実として受けとらねばならぬのであります。もっと明暸に云うと「意識には連続的傾向がある」と云い切ってこれを事実として受けとるのであります。・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・滞貨放出。ガスの制限もゆるやかになりました。そして冬は石炭も手に入るであろう。 ここに、わたしたちを堪えがたくする現実の矛盾がある。理性のある社会の生活であると思うことのできないあからさまな不合理が強いられている。 社会の新しい歴史・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
出典:青空文庫