・・・これは少し変った言い分のようであるが、しかし一般に云って、同じ団体がそう永く無事に続くということ自身が沈滞と硬化とを意味する場合が多い。これは政党でも学術団体でも、芸術団体でも同様である。どこでもやはり時々「野獣の群」が出なければ新しい生命・・・ 寺田寅彦 「二科展院展急行瞥見記」
・・・これに反して大多数の政党員ないし政治に興味をもつ一般人、それからまじめな商業や産業に従事している人たちにとってたとえば仏国の大統領が代わったとかニューヨークの株が下がったとか、あるいは北海道で首相が演説したとか議会で甲某が乙某とどんなけんか・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・ そのうち、君は池辺君と露西亜の政党談をやり出した。大変興味があると見えて、いつまで立ってもやめない。びび数千言と云うとむやみに能弁にしゃべるように聞こえてわるいが、時間から云えば、こんな形容詞でも使わなくってはならなくなるくらい論じて・・・ 夏目漱石 「長谷川君と余」
・・・英国の政党が立憲政治の始まった時から二派に分れている。あれは偶然のような必然のような歴史を有しているが相互に相互を研究し啓発すると云う大原則を政治上にうまく応用したものであります。もっともこれは圏外の競争の意味である。そうして、日本の作物が・・・ 夏目漱石 「文壇の趨勢」
・・・政治の気風が学問に伝染してなお広く他の部分に波及するときは、人間万事、政党をもって敵味方を作り、商売工業も政党中に籠絡せられて、はなはだしきは医学士が病者を診察するにも、寺僧または会席の主人が人に座を貸すにも、政派の敵味方を問うの奇観を呈す・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・絶望し、分別を失ったドイツの民衆は、それがなんであろうと目前に希望をあたえ、気休めをあたえるものにすがりつき、いかがわしい予言者だの、小政党だのが続々頭をもたげた。 ヒトラーのナチスも、はじめはまったくその一としてあらわれた。当時のドイ・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・それは日本ではすべての組合や政党に婦人部というものがあって、それがまだ社会の事情から独特の必要をもっているのと似かよった理由があると思う。つまり今日の資本主義社会の個人的な経済競争の中で、中小工業者が苦しいとおり、婦人画家の経済上、芸術上独・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・慣例的な二大政党制はアメリカでうちやぶられた。民主的な人民は、事情によっては彼らの票を集中するウォーレスの党をもっているのであるから。 わたしたちは、こういう事実からなにを学ぶだろう。まずさしあたり、日本の首相吉田が、再開の国会において・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・総数四六四名の代議士が、各自所属している政党を眺めても、これは一目瞭然であろう。自由党 一三六名 五名 計 一四一名進歩党 八七名 六名 九三名社会党 八四名 八名 九二名協同党 一四名 ナシ ・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・に腐心して、一歩一歩人民の真の必要から離れつつある政党の首領たちは、その一歩ごとに「生ける屍」となりつつある。〔一九四六年一月〕 宮本百合子 「女の手帖」
出典:青空文庫