・・・というよりも「飯を食ったり、酒を飲んだり、交合「じゃこの国にも教会だの寺院だのはあるわけなのだね?」「常談を言ってはいけません。近代教の大寺院などはこの国第一の大建築ですよ。どうです、ちょっと見物に行っては?」 ある生温かい曇天・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・千五百四十七年には、シュレスウィッヒの僧正パウル・フォン・アイツェンと云う男が、ハムブルグの教会で彼が祈祷をしているのに出遇った。それ以来、十八世紀の初期に至るまで、彼が南北両欧に亘って、姿を現したと云う記録は、甚だ多い。最も明白な場合のみ・・・ 芥川竜之介 「さまよえる猶太人」
・・・の著者が挙げて居りますカムパアランドのカアクリントン教会区で、七歳の少女がその父の二重人格を見たと云う実例や「自然の暗黒面」の著者が挙げて居りますH某と云う科学者で芸術家だった男が、千七百九十二年三月十二日の夜、その叔父の二重人格を見たと云・・・ 芥川竜之介 「二つの手紙」
・・・浦川和三郎氏著「日本に於ける公教会の復活」第十八章参照。 芥川竜之介 「誘惑」
・・・地震、と欄干につかまって、目を返す、森を隔てて、煉瓦の建もの、教会らしい尖塔の雲端に、稲妻が蛇のように縦にはしる。 静寂、深山に似たる時、這う子が火のつくように、山伏の裙を取って泣出した。 トウン――と、足拍子を踏むと、膝を敷き、落・・・ 泉鏡花 「木の子説法」
・・・ 丁度巌本善治の明治女学校が創立された時代で、教会の奥に隠れたキリスト教婦人が街頭に出でて活動し初めた。九十の老齢で今なお病を養いつつ女の頭領として仰がれる矢島楫子刀自を初め今は疾くに鬼籍に入った木村鐙子夫人や中島湘烟夫人は皆当時に崛起・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・なるほどここにも学校が建った、ここにも教会が建った、ここにも青年会館が建った、ドウして建ったろうといってだんだん読んでみますと、この人はアメリカへ行って金をもらってきて建てた、あるいはこの人はこういう運動をして建てたということがある。そこで・・・ 内村鑑三 「後世への最大遺物」
・・・人の有なれば也、現世に在りては義のために責められ、来世に在りては義のために誉めらる、単に普通一般の義のために責めらるるに止まらず、更に進んで天国と其義のために責めらる、即ちキリストの福音のために此世と教会とに迫害らる、栄光此上なしである、我・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・トーヴァルセンを出して世界の彫刻術に一新紀元を劃し、アンデルセンを出して近世お伽話の元祖たらしめ、キェルケゴールを出して無教会主義のキリスト教を世界に唱えしめしデンマークは、実に柔和なる牝牛の産をもって立つ小にして静かなる国であります。・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・細君は店へ顔出しするようなことは一度もなく、主人が儲けて持って帰る金を教会や慈善団体に寄附するのを唯一の仕事にしていた。ほんまに大将は可哀相な人だっせと仲居は言うのだったが、主人の顔には不幸の翳はなかった。 しかし、ある夜――戦争がはじ・・・ 織田作之助 「世相」
出典:青空文庫