・・・ この室のものはさすがになつかしいものばかりである。斎藤豊作氏の「落葉する野辺」など昔見たときは随分けばけばしい生ま生ましいもののような気がしたのに、今日見ると、時の燻しがかかったのか、それとも近頃の絵の強烈な生ま生ましさに馴れたせいか・・・ 寺田寅彦 「二科展院展急行瞥見記」
・・・意識的連想の活動に慣らされたものから見ると、たとえば定家や西行の短歌の多数のものによって刺激される連想はあまりに顕在的であり、訴え方があらわであり過ぎるような気がするのをいかんともすることができない。斎藤茂吉氏の「赤光」の歌がわれわれを喜ば・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・の十一月号を開いて見ると、斎藤茂吉氏の「大沢禅寺」と題した五首の歌がある。これを一つの連作と見なして点検してみると、これは著しく他と異なった特徴をもっていることに気がつく。その五首というのは次のとおりである。木原よりふく風のおと・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・川村にしても、高橋にしても、斎藤にしても、小野にしても、其他十数人の、彼を支持する有力な子分は、皆組合の手に奪われてしまったのだ。 それを、いま自分が、争議中の一切の恨を水に流して、自ら貰い下げに行くことは、どれだけ彼らに大きな影響を与・・・ 徳永直 「眼」
・・・ 桜花は上野の山内のみならず其の隣接する谷中の諸寺院をはじめ、根津権現の社地にも古来都人の眺賞した名木が多くある。斎藤月岑の東都歳事記に挙ぐるものを見れば、谷中日暮里の養福寺、経王寺、大行寺、長久院、西光寺等には枝垂桜があり、根津の社内・・・ 永井荷風 「上野」
・・・好事家ハ宜シク斎藤昌三氏ノ『現代日本文学大年表』ニ就イテコレヲ正シ給エトイウ。 永井荷風 「正宗谷崎両氏の批評に答う」
・・・どこへ行くねってまたきいたらば、更木の斎藤へ行くよと言った。岸についたら子供はもういず、おらは小屋の入口にこしかけていた。夢だかなんだかわからない。けれどもきっと本当だ。それから笹田がおちぶれて、更木の斎藤では病気もすっかり直ったし、むすこ・・・ 宮沢賢治 「ざしき童子のはなし」
森鴎外の「歴史もの」は、大正元年十月の中央公論に「興津彌五右衛門の遺書」が載せられたのが第一作であった。そして、斎藤茂吉氏の解説によると、この一作のかかれた動機は、その年九月十三日明治大帝の御大葬にあたって乃木大将夫妻の殉・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ 中野重治の『斎藤茂吉ノオト』をおもちでしょうか。窪川鶴次郎の『短歌論』をおもちでしょうか。おハガキ頂きませば『仰日』の御礼のこころとしてお送りいたしますが―― わたくしはふとっていて、作品を通しての夫人はほっそりと小柄なお方のよう・・・ 宮本百合子 「歌集『仰日』の著者に」
・・・ 斎藤国警長官の進退をめぐって政府と公安委員会が対立し、公安委員会は斎藤氏の適格を主張し、ついに、政府は静観となった。この事件も、下山氏の死にからんで強行されようとした何かの政界の失敗であり、この失敗そのものが、逆に下山氏の死の微妙ない・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
出典:青空文庫