・・・ 「新生」読後 果して「新生」はあったであろうか? トルストイ ビュルコフのトルストイ伝を読めば、トルストイの「わが懺悔」や「わが宗教」のうそだったことは明らかである。しかしこのを話しつづけたトルスト・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・や「改造」や「新生」や「展望」がどうして武田さんの新しい小説を取らないのかと、口惜しがっていた。私は誇張して言えば、毎日の新聞の雑誌広告の中に武田さんの名を見つけようとして、眼を皿にしていた。そして、見つけたのは「武田麟太郎三月卅一日朝急逝・・・ 織田作之助 「武田麟太郎追悼」
・・・有名な「新生」の主人公は節子に数珠を与えるがやはり別れねばならなかった。いかに数多くの愛し合った男女、誓い合った朋友、恩義ある師弟がそれぞれの事情から別れねばならなかったであろう。その中には生木を割くような生別もあるのである。 いったん・・・ 倉田百三 「人生における離合について」
・・・あの満天星を御覧、と言われて見ると旧い霜葉はもう疾くに落尽して了ったが、茶色を帯びた細く若い枝の一つ一つには既に新生の芽が見られて、そのみずみずしい光沢のある若枝にも、勢いこんで出て来たような新芽にも、冬の焔が流れて来て居た。満天星ばかりで・・・ 島崎藤村 「三人の訪問者」
・・・ダンテは九歳にして「新生」の腹案を得たのである。彼もまた。小学校のときからその文章をうたわれ、いまは智識ある異国人にさえ若干の頭脳を認められている彼もまた。家の前庭のおおきい栗の木のしたにテエブルと椅子を持ちだし、こつこつと長編小説を書きは・・・ 太宰治 「猿面冠者」
・・・老衰して黒っぽくなりその上に煤煙によごれた古葉のかたまり合った樹冠の中から、浅緑色の新生の灯が点々としてともっているのである。よく見ると、場所によってこの新芽のよく出そろったところもあり、また別の町ではあまり目立たないところもある。さらにま・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・が「新生」と異るように異るものであった。藤村はおどろくばかり計画性にとんだ作家で、その自己に凝結する力は製作の態度から日常生活の諸相へまで滲み透っていた。藤村の生きかたでは、逸脱は或る意味で彼の人生にとって過誤であった。けれども秋声の場合に・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・作家の精神と肉体とは現実に向って先ず活々と積極性をもって動き出さなければ文学に新生命はもたらされまいと云う要求が起った。当時のフランスの文芸思潮の積極的な動きがN・F・R誌などを通じて日本へもその影響をもたらしたこともある。「行動主義の文学・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ての究明と呼応して取りあげられたのであるが、私たちの注意をひく点は、ブルジョア文学におけるこれらの諸課題=リアリズムの問題も、外国の古典作品の研究、明治文学の再吟味などすべてが、文学創作にとって実際上新生面を打開する積極的な役割ははたし得ず・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・「破戒」によって、立派な出発をした。「春」「家」「桜の実の熟する時」「新生」「嵐」、それらの間に「新片町より」「後の新片町より」「春を待ちつゝ」等の感想集をもち、十二巻の全集が既に上梓された。更に最近七年間の労作である長篇「夜明け前」は明治・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
出典:青空文庫