・・・講義になるとすると、私の講義は暗ではやらない、云う事はことごとく文章にして、教場でそれをのべつに話す方針であります。ところが今日はそれほどの閑暇もなし、また考えも纏まっておりません。だから上手であるべき講義も今日に限って存外拙い訳であります・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・年来自分が考えたまた自分が多少実行し来りたる処世の方針はどこへ行った。前後を切断せよ、妄りに過去に執着するなかれ、いたずらに将来に望を属するなかれ、満身の力をこめて現在に働けというのが乃公の主義なのである。しかるに国へ帰れば楽ができるからそ・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・ 我国民の思想指導及び学問教育の根本方針は何処までも深く国体の本義に徹して、歴史的現実の把握と世界的世界形成の原理に基かねばならない。英米的思想の排撃すべきは、自己優越感を以て東亜を植民地視するその帝国主義にあるのでなければならない・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・左れば今の女子を教うるに純然たる昔の御殿風を以てす可らざるは言うまでもなきことなれども、幼少の時より国字の手習、文章手紙の稽古は勿論、其外一切の教育法を文明日進の方針に仕向けて、物理、地理、歴史等の大概を学び、又家の事情の許す限りは外国の語・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・其原因様々なる中にも、少小の時より教育の方針を誤りて自尊自重の徳義を軽んじ、万有自然の数理を等閑にし、徒に浮華に流れて虚文を弄ぶが如き、自から禍源の大なるものと言う可し。例えば学校の女生徒が少しく字を知り又洋書など解し得ると同時に、所謂詠歌・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ で結局のところ、茨海狐小学校では、一体どういう教育方針だか、一向さっぱりわかりません。 正直のところわからないのです。 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・しかし裁判の方針はどうですか。」「はい。裁判の方針はこちらの世界の人民が向うの世界になるべく顔を出さぬように致したいのでございます。」「わかりました。それではすぐやります。」 ネネムはまっ白なちぢれ毛のかつらを被って黒い長い服を・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・大衆的な某誌は、その反動保守的な編輯方針の中で、色刷り插絵入りで、食い物のこと、悲歎に沈む人妻の涙話、お国のために疲れを忘れる勤労女性の実話、男子の興味をそそる筆致をふくめた産児制限談をのせて来た。 また、或る婦人雑誌はその背後にある団・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・まずさしあたり、日本の首相吉田が、再開の国会において、一般施政方針の演説もしないで、日本のタフト・ハートレー法を通過させようとしていることは、妙だ、ということである。政治一般の方針を示さず、検討せず、どうして公務員法案だけは通してよい法案で・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・社会主義社会の建設は、果して成りゆきによってその方針を決定され、進展されているような受動的なものであるであろうか? それは全然反対だ。 ドミトリーは遂に決心した。「よし!」 インガは息をころしたが、ドミトリーは呻いて一つところを・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
出典:青空文庫