・・・ されば人生の道徳は夫婦の間に始まり、夫婦以前道徳なく、夫婦以後始めてその要を感ずることなれば、これを百徳の根本なりと明言して決して争うべからざるものなり。既に夫婦を成してここに子あり、始めて親子・兄弟姉妹の関係を生じ、おのおのその関係・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・科学主義工業の提唱者は、おおうところなく明言している。例外なしに、農村の子女に適当な機械と設備とをあてがえば熟練の大衆化によって、数日にして「大の男の熟練工と同じ程度の熟練さを習得するのである」と。男の補助ではなく、男の代るものとして、婦人・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・私は敢て、箇人主義は大なる社会的生存に一致する事を明言して恥じないのである。 箇人主義と社会的生存。 それは、甚だ矛盾した様な外見を持って居る。 けれ共、正しい箇人主義は社会的生存に一致する事を私は確信して居る。 箇人主義、・・・ 宮本百合子 「大いなるもの」
・・・それにそのひとは、自分の感情に結婚はまだわかっていないから、分るまで待って結婚したいと思っているのではなくて、いずれ両親の見出してくれる適当な配偶者と結婚するだろうということは明言しているのであった。 親の見出してくれた配偶者と結婚して・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・自分ではっきり立候補の計画をもっている婦人たちは、ふさわしいと判断した政党に入党手続をしたと報道されているし、立候補を予測されている人の中で、自分は絶対に立候補しないと明言している婦人たちもある。 選挙という私たちの新しい仕事につれて、・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・一九二五年の文学に関するテーゼは、その組織に対する支持と、農民に影響するために必要な農民文学の独特な形象を保護することなどを明言した。 成程、ロシアの農民は「十月」と村ソヴェトの成立と同時に、彼の草鞋をぬぎすてはしなかった。密造酒をつく・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・文学団体が機関誌さえも順調に刊行できず、団体解散の理由を、直接治安維持法の暴力によるものと明言し得ないで、指導者と指導理論の批判に藉口するために汲々としている雰囲気の中で、小林多喜二全集刊行がどうして実現しよう。客観的にも主観的にも全集刊行・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・自分で、物価の統制に関する法律が悪法であると明言しながら、それが法律であるからにはひとにも厳格に適用し、自分もそれで死ぬことをむしろいさぎよしとしたこの判事の悲劇は、「葦折れぬ」の純情がその社会問題のうけとりかたでは文部省版であったことの遺・・・ 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・と云う一面、ゲーテ、シェイクスピア、ニーチェ、あらゆる古今の天才に倣わんとするものであると云わせる彼の天才主義は、彼自身そこから超脱した生活は有り得ないことを明言している時代と歴史の歯車の間で、どのような自身の帰結を可能としていたろうか。・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・は、もっとも戦争中戦争遂行に協力した人々の一群であるし、このごろさかんに執筆している石川達三氏は戦時中の協力に対して、日本がふたたびあやまちを犯せば自分もまたふたたび犯すであろうという意味を雑誌の上に明言しています。石川達三氏は、今日の人民・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
出典:青空文庫