・・・私が時間割を作ってやって勉強させていたのである。あまり覚えなかったようである。英語はロオマ字をやっと読めるくらいになって、いつのまにか、止めてしまった。手紙は、やはり下手であった。書きたがらなかった。私が下書を作ってやった。あねご気取りが好・・・ 太宰治 「東京八景」
・・・四角に仕切った芝居小屋の枡みたような時間割のなかに立て籠って、土竜のごとく働いている教師より遥かに結構である。しかし英語だけの本城に生涯の尻を落ちつけるのみならず、櫓から首を出して天下の形勢を視察するほどの能力さえなきものが、いたずらに自尊・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・いくら巡査が左へ左へと、月給を時間割にしたほどな声を出して、制しても、東西南北へ行く人をことごとく一直線に、同方向に、同速力に向ける事はできません。広い世界を、広い世界に住む人間が、随意の歩調で、勝手な方角へあるいているとすれば、御互に行き・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・それは役所の日課の時間割によって、忠実になされているのであるから。私はしまいに、ラジオで音楽が鳴り出すと、決して終りまで心持よく聴くことなどを初めから期待しないという抵抗力をつけた。さもなければ、緊張と中絶との全然受動的なくり返しで、かえっ・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・ 遠足をやるにしても、遠足の実行委員があげられ、行先、時間割、見学予定、旅費その他を研究する。級の討議で決定する。――ソヴェト同盟で教師は、ほんとに指導者なのだ。 このように有効に組織されている小学校へ、全同盟の学齢児童を経費国庫負・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・衣類や食物や、行動の時間割などについて。紙数の制限があった故であろうが、余りそれだけすぎた。例えばそのような細部に於ても女囚が月経中まし紙と称して多少余計な浅草紙をいただかせて頂く、ということ。その非衛生な事実について筆者の意見が些も滲み出・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
出典:青空文庫