・・・例えば馬の鞍の形をなせる曲面の背筋の中点より球を転下すれば、球の経路には二条の最大公算を有するものあるべし。またある時間内に降れる雨滴の大きさを験する時は、その大きさの公算曲線には数箇の山を見出すべし。これらの場合を総括するに、いずれもかつ・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・人情と義理と利害をXYZの座標とする空間に描きだされた複雑極まりない曲面の集合の一つの切り口が見える。これをじっと眺めていると、面白くもあれば恐ろしくもある。」 何かというとすぐに「XYZの座標」を持ちだすのが彼の一つの癖である。これさ・・・ 寺田寅彦 「年賀状」
・・・のであるまいか。 こんな事を考えるのはあるいは自分の子供の時に受けた「化け物教育」の薬がきき過ぎて、せっかく受けたオーソドックスの科学教育を自分の「お化け鏡」の曲面に映して見ているためかもしれない。そうだとすればこの一編は一つの・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・不愉快な灰色の高い壁は上の端で曲面を形作って天井につながっていた。天井の真中に白く塗った空気抜きの窓がただ一つあるだけであった。なんだか「壙穴」という文字がすぐに頭に浮んだ。 寺田寅彦 「病中記」
出典:青空文庫