・・・「日蓮は日本国東夷東条安房国海辺旃陀羅が子也」と彼は書いている。今より七百十五年前、後堀川天皇の、承久四年二月十六日に、安房ノ国長狭郡東条に貫名重忠を父とし、梅菊を母として生まれ、幼名を善日麿とよんだ。 彼の父母は元は由緒ある武士だった・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・この山のとなえをいつの頃よりか武甲と書きならわししより、終に国の名の武蔵の文字と通わせて、日本武尊東夷どもを平げたまいて後甲冑の類をこの山に埋めたまいしかは、国を武蔵と呼び山を武甲というなどと説くものあるに至れり。説のいつわりなるべきは誰し・・・ 幸田露伴 「知々夫紀行」
・・・ 宇都野さんの歌はどう見ても大宮人の歌ではない、何処かしら東夷とでも云いたいような処があると私は思う。その点を私は面白いと思う。そしてそういう処をもっと出してもらいたいような気がする。 すべての歌人の取材の範囲やそれに対する観照の態・・・ 寺田寅彦 「宇都野さんの歌」
・・・後者は、ギリシア人であったのが後には一般外国人、あるいは回教徒の意に用いられ、ちょうどギリシア人の barbaros に相当するものになっているからおもしろい。東夷南蛮の類であり、毛唐人の仲間である。この「ヤナ」が「野蛮」に通じまた「野暮な・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
出典:青空文庫