・・・その物を見究めることに於いて、個人としての女、個人としての男に就いていうならば、その生活上に於ける色々の意味から、個人としての女の方に、ヨリ多くの欠陥が見出されます。 今、女の立場からその個人の成長に就いていえば、――それは当然私自身の・・・ 宮本百合子 「今日の女流作家と時代との交渉を論ず」
・・・一つ一つ新らしい現象を究める毎に私は生命の知識がそれ丈拡がった歓びを 感じずには居られないのだ。 * 六月十六日落付いて、小説を書くようになったら又私の処から詩らしい言葉の調子が逃げ・・・ 宮本百合子 「初夏(一九二二年)」
・・・という気持、あの「人を救うための求道ではない、真理の為めに真理を究める求道」であるという心境、それを私は求めたいと思います。私の目下はあの地虫が春が来てひとりでに殼を破って地上に抜け出る、あの漸進的な自然の外脱を得たいと思います。 至純・・・ 宮本百合子 「女流作家として私は何を求むるか」
・・・僕は何故にお稲荷さんが、特に女中をしていたお梅さんを抜擢したかということまで、神慮に立ち入って究めることは敢てしない。しかし兎に角第二の細君が直ぐに出来たのは、箕村のために幸福であった。箕村は一日も不自由をしない。箕村のお客たる僕なんぞも不・・・ 森鴎外 「独身」
・・・君の胸臆は明白に私の前に展開せられて時としては無遠慮を極めることがある。Verblueffend に真実を説くことがある。私はいつもそれを甘んじ受けて、却って面白く感じた。 殆ど毎日逢って、時としては終日一しょにいることさえあるので、F・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫