・・・各々もとめるところの形は皆ちがいましょうけれど、私達の理想とするものは、愛と平和の融合を措いてこの世の楽園は考えられないと思います。然し常にこの世に争闘が絶えないと同時に、それは実現し難いものだと思います。例えば親子間の愛――この世にたった・・・ 宮本百合子 「愛と平和を理想とする人間生活」
・・・そして、この二人の人間は禁断のこのみを食べたため、神の怒りによって楽園から追払われました。 それから人間は、何処かに楽園があるわけだと考えるようになりました。そこでは、人間はみんな平等であり、花は爛漫と咲きほこり、人情はあたたかくて生活・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・映画一つ見ても見方はいろいろでしょう、せんだってうち、評判のよかった映画で「我が家の楽園」がありましたね、御覧になりましたか。あれはアメリカの映画の中で家庭というものが、これ迄になかった見方で扱われていた一つの例ではないでしょうか。これまで・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・ミーダ 体も心も赤裸か、楽園を追われたアダムとイブと云いたいが、俺と云う憑きものがあるだけ、あの当時より複雑だ。カラ ああ私も、久しぶりで堪能した。ちょいちょい小出しに楽しもうと蓄めさせた涙の壺、霊の櫃だけでも彼那になった。ヴィ・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・ あれほど魂の安息所のようにも、麗わしい楽園のようにも思われた魅力は跡かたもなく消えて、今、死は明かに拒絶され、追放される。「死ぬのはこわい」という恐怖が目覚めて、大いそぎで涙を拭く彼女は、激情の緩和された後の疲れた平穏さと、まだ何・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・吾人が真正の社会主義の理想に歩を進め、ダンテの楽園に到達すべき出発点である。世人がすべてこれに傾向する時 To thee be all man Hero の境地はますます明らかになるであろう。ソシアリティの本義も恐らくはここである。深山に俗・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫