・・・ 突然横槍を入れたのは、飯沼という銀行の支店長だった。「河岸を変えた? なぜ?」「君がつれて行った時なんだろう、和田がその芸者に遇ったというのは?」「早まっちゃいけない。誰が和田なんぞをつれて行くもんか。――」 藤井は昂・・・ 芥川竜之介 「一夕話」
・・・』と、からかうように横槍を入れましたが、そのからかうような彼の言が、刹那の間私の耳に面白くない響を伝えたのは、果して私の気のせいばかりだったでしょうか。いや、この時半ば怨ずる如く、斜に彼を見た勝美夫人の眼が、余りに露骨な艶かしさを裏切ってい・・・ 芥川竜之介 「開化の良人」
・・・けれども、決着の土壇場に、保険会社から横槍が出た。事件の再調査を申請して来たのである。その二年前に、勝治は生命保険に加入していた。受取人は仙之助氏になっていて、額は二万円を越えていた。この事実は、仙之助氏の立場を甚だ不利にした。検事局は再調・・・ 太宰治 「花火」
出典:青空文庫