・・・ ファシズムというと、わたしたちはすぐ戦争中のままの形で超国家的な大川周明の理論や、憲兵の横暴や、軍部、検事局その他人民を抑圧した天皇制の機構全体を頭にうかべて、なんとなしその全体に体当りで抵抗するのがファシズムへの抵抗という感じをもっ・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・大河内氏は、日本の女子の天才の一つとしてそれを感歎し、それは改良されている機械の機構と、「その使いかたが単調無味であるように製作されてあるほど精密に加工されるから」「飽きることを知らない農村の女子が農業精神で」その精密加工に成功し「農村の子・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・農民生活のそれらの条件が、一方で益々発展する資本主義の経済機構から板ばさみをうけて、農村の貧しさ、野蛮さが、一層苦しいものとなっているという社会関係もしらなかった。それらについて知らなかったけれども、子供の頃より折々そこに暮して、村の街道の・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」
・・・をかいた頃、作者は自分の見ているソヴェトの現実が、どんなに巨大な機構のうちの小さくて消極的な断片であり、しかも海岸の棒杭にひっかかっている一本の枝とそこについているしぼんだ花のような題材にすぎないかということは理解しなかったのである。 ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第四巻)」
・・・しかし、作家たちが社会機構の中で保守封建なものとたたかいながら、営利資本の圧力に抗しつつ自身とその芸術を新しくし、なおさらに新しい作家と文学とをもりたててゆこうと欲するとき、自分たちの文学活動の自立性を、民主の立場にたって、経済的に政治的に・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・そして、いつかの折に藤村という一つの大きい明治文学の屋台をふわけして、生々しい機構を知りたいという慾望を刺戟されたのであった。 アルゼンチンの国際ペンクラブの大会に藤村氏が出席したからには、能うかぎり進歩的効果のあげられることを、私たち・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・人民の社会生活が戦争犯罪的権力によって破壊された今日、それを癒す道は犯罪的な権力を根本的に人民の生活機構から追放して、健全な精神と能力の人民が自分ら人民のために社会を運営してゆく方法しかない。これは動かせない事実である。それにもかかわらず、・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・―― 彼の作品のあるものには、現代社会の機構や社会の生産にたずさわる労働大衆の現実について、当時としてもおどろかれる無智と独断が示されている。ローレンスは、自分がその底から生れ出て来た大衆を信頼しないし、このんでいなかった。何をするにも・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・ 此の一大事実を認めた以上は、われわれはいかに優れたコンミニストと雖も、資本主義と云う社会を、敵にこそすれ、敵としたるがごとくしかく有力な社会機構だと云うことをも認めるであろう。 しかしながら、此の資本主義機構は、崩壊しつつ・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
・・・人間の作る機械よりもはるかに精巧な機構を持った植物が、しかも実に豊富な変様をもって眼の前に展開されている。自分たちが今いるのはわびしい小さな電車の中ではなくして、実ににぎやかな、驚くべき見世物の充満した、アリスの鏡の国よりももっと不思議な世・・・ 和辻哲郎 「寺田さんに最後に逢った時」
出典:青空文庫