・・・その頃毎日新聞社に籍を置いたG・Yという男が或る時、来て話した。「僕は社の会計から煙草銭ぐらい融通する事はあるが、個人としての沼南には一銭だって借りた覚えがない。ところがこの頃退引ならない事情があって沼南に相談すると、君の事情には同情するが・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・というので、毎日新聞がお前の妹のことをデカ/\と書いた。検事の求刑は山崎が三年、お前の妹が二年半、上田と大川は二年だった。それで、第一審の判決は大体の想像では、みんな半年位ずつ減って、上田と大川は執行猶予になるだろうということだった。上田の・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・そういう書物を毎日新聞を読む時間にひと切りずつ読む事にしたらどうであろう。その積算的効果はかなりなものになりはしまいか。 まとまったものを少しずつ小切って読んで行って、そうして前後の連絡を失わないようにするという事は必ずしも困難とは限ら・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・一九三〇年の暮から一九三二年いっぱいに書かれたソヴェト紹介の文章は、『女人芸術』『戦旗』『ナップ』をはじめとして『毎日新聞』『改造』そのほか記憶することが困難なほどの数にのぼった。 その数多いソヴェトに関する執筆のうち、単行本としてまと・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・いま毎日新聞に連載されているチャーチルの回想録をよんでもそれははっきりわかるし、最近並河亮氏が訳したアプトン・シンクレアの大長篇の一部「勝利の世界」をよんでもまざまざと描きだされている。主人公ラニー・バットは、フランスがヴィシーに政府をうつ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・その点皆さん『朝日』や『毎日新聞』の方たちがおっしゃいましたけれども、被告は、私は生活苦からやったんじゃありませんといっている、それだのに、判事や検事の人が社会問題、生活苦だということを非常におっしゃる。それで寛大にする。それはやっぱり裁判・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・ つい先頃、吉田内閣ができようとしていた数日前、『毎日新聞』は、各政党支持の世論調査というものを発表した。その世論調査では、吉田総裁の民主自由党が第一位を占めていた。『毎日新聞』の発行部数は百万と二百万の間と云われている。日本では、まだ・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・それは一九四九年度の調査のために、毎日新聞は一九四七年度の調査にあらわれた特に読書率の低い地方を対象としたということである。大都市よりも農村に。組織労働者の多いところより、全体として自覚ある労働者のすくない地方、政治的覚醒の著しいと見られて・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・そのうち警察官の人権蹂躙事件五〇%。毎日新聞の社説に、この五〇パーセントが「二十五年には八〇%というおどろくべき数字をしめしている」「官憲による恐怖時代がまだ存在している」とかかれているのは誇張でない。最高検では、青少年の反社会的行為が、お・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・ 新日本文学に属する民主的立場の作家の活動は、それぞれの作家の特長にしたがってだんだん流動してきました。毎日新聞の出版文化賞に「播州平野」と「風知草」とが当選したことは、その作家一人の問題ではなくて、民論が一方で坂口安吾氏の文学を繁昌さ・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
出典:青空文庫