・・・それですから、ことしの四月の総選挙も、民主主義とか何とか言って騒ぎ立てても、私には一向にその人たちを信用する気が起らず、自由党、進歩党は相変らずの古くさい人たちばかりのようでまるで問題にならず、また社会党、共産党は、いやに調子づいてはしゃい・・・ 太宰治 「トカトントン」
・・・滅するものだ、太宰も、もうこれでおしまいか、忠告せざるべからず、と心配して下さる先輩もあるようであるが、しかも古来、負けるにきまっていると思われている所謂謀叛人が、必ずしも、こんどは、負けないところに民主革命の意義も存するのではあるまいか。・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・ 私は、所謂文化講演会だの、座談会だのに出て、人々に民主主義の意義などを説き聞かせるのは、にがてなのである。いかにも自分がにせもので、狸のお化けのような気がして来て、たまらないのである。「まさか、先生のお話なんか聞きに来る人は、無い・・・ 太宰治 「母」
・・・世は滔々として民主革命の行われつつあり、同胞ひとしく祖国再建のため、新しいスタートラインに並んで立って勇んでいるのに、僕ひとりは、なんという事だ。相も変らず酔いどれて、女房に焼きもちを焼いて、破廉恥の口争いをしたりして、まるで地獄だ。しかし・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・「でも、いまは民主革命の絶好のチャンスですからね。」「ええ、そう。チャンスです。」「いまをはずしたら、もう、永遠に、……」「いいえ、でも、わたくしたちは絶望しませんわ。」 またもお世辞の失敗か。むずかしいものだ。「お・・・ 太宰治 「渡り鳥」
・・・ 十二年をへだて、今日著者がたまに書く文学評論は、主題と表現の問題にしろよりリアルにとらえられていて、人民的な民主主義社会とその文学の達成のために、堅ろうな階級的骨組みとくさびとを与えている。 著者自身が一九二九年に「過渡期」として・・・ 宮本百合子 「巖の花」
日本の民主化と云うことは実に無限の意味と展望を持っている。 特に一つ社会の枠内で、これまで、より負担の多い、より忍従の生活を強いられて来た勤労大衆、婦人、青少年の生活は、社会が、封建的な桎梏から自由になって民主化すると・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・ 一、民主的な社会で、大切なのは多数の人々の意見であり、多数の人々が自分の意見を出し合って、その結論を互に出発したところよりは高く豊富で合理的なところに育ててゆくのが大事な特長です。 一、輿論というと、むずかしく思えるけれども、誰で・・・ 宮本百合子 「朝の話」
・・・が、日本の民主的な文学の流れは、昭和のはじめ世界の民主主義の前進につれて歴史的に高まり、プロレタリア文学の誕生を見た。その当時、その流れの中からこそ、これまでとちがった勤労婦人の中からの婦人作家が出て来た。佐多稲子、松田解子、平林たい子、藤・・・ 宮本百合子 「明日咲く花」
・・・ このたびの大戦の結果は、二十五年以前の第一次世界大戦のときよりも、いっそうまざまざと人間理性の勝利の意味、民主的社会の価値を教えたのだが、それにつれて、世界の女性のうごきも、独特の飛躍発展を示してきている。日本はこの十数年間、鎖国の状・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
出典:青空文庫