・・・ その癖、こいつらは、噴火で砕けて、まっくろな煙と一緒に、空へのぼった時は、みんな気絶していたのです。「さあ、僕は一向まわろうとも思わなかったが、ひとりでからだがまわって仕方なかったよ。」「ははあ、何かこわいことがあると、ひとり・・・ 宮沢賢治 「気のいい火山弾」
・・・ 六平はクウ、クウ、クウと鳴って、白い泡をはいて気絶しました。それからもうひどい熱病になって、二か月の間というもの、「とっこべとら子に、だまされだ。ああ欺されだ」と叫んでいました。 みなさん。こんな話は一体ほんとうでしょうか。ど・・・ 宮沢賢治 「とっこべとら子」
・・・只今気絶をいたしました。」「はぁい。いまだんだんそっちを向きますから。ようっと。はい、はい。これは、なるほど。ふふん。一寸脈をお見せ、はい。こんどはお舌、ははあ、よろしい。そして第十八へきかい予備面が痛いと。なるほど、ふんふん、いやわか・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・蠍は頭に深い傷を受け、大烏は胸を毒の鉤でさされて、両方ともウンとうなったまま重なり合って気絶してしまいました。 蠍の血がどくどく空に流れて、いやな赤い雲になりました。 チュンセ童子が急いで沓をはいて、申しました。「さあ大変だ。大・・・ 宮沢賢治 「双子の星」
・・・咲枝同じ梁のはずれで圧せられ、屋根から手を出し、叫んだのを、留守番の男が見つけききつけかけつけて出そうとして居るうち、ツナミが来たので、あわててそのまま逃てしまった。咲枝気絶してしまって居たところに、逗子に行って居た一馬がかえり、その手を見・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・クリミヤでの激労ですっかり健康を害してイギリスに着いた彼女は、心臓衰弱に襲われ、たえず気絶の発作と全身の衰弱に悩まされた。医師は極力静養を求める。ナイチンゲールにとって、どうして今休養などをとっていられよう。今こそ好機が到来したのだ。鉄は熱・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・或る土曜日、ゴーリキイは猛烈に抵抗して猶更祖父さんからひどくひっぱたかれ、最後まであやまらないで気絶したことがあった。このことでゴーリキイは熱病にかかり、永い間寝床から起きられなかった。ほかの従兄弟らは、依然として土曜日になると樺の鞭をくっ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ゴーリキイはその屈辱的な仕置に抵抗して、とうとう気絶し、熱をだして病気になるまで鞭うたれたことさえある。 一八六一年にアレキサンダア二世が欺瞞的な農奴解放を行い、ゴーリキイが生れた時分、もう農奴制そのものは廃止されていたけれども、二百五・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・幾度も抵抗して猶更ひどくひっぱたかれ、とうとう気絶し熱を出して永い病気になってから、さすがの祖父もゴーリキイに手を出すことは止めにした。 こういう幼年時代の暗い境遇の中で、ゴーリキイの心に消えぬ光明と美の感情を与えていたのは祖母アクリー・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・ お花はそのまま気絶したのを、お松は棄てて置いて、廊下をばたばたと母屋の方へ駈け出した。 * * * 川桝の内では一人も残らず起きて、廊下の隅々の電灯まで附けて、主人と隠居とが大勢のものの騒ぐの・・・ 森鴎外 「心中」
出典:青空文庫