・・・ 左れば自国の衰頽に際し、敵に対して固より勝算なき場合にても、千辛万苦、力のあらん限りを尽し、いよいよ勝敗の極に至りて始めて和を講ずるか、もしくは死を決するは立国の公道にして、国民が国に報ずるの義務と称すべきものなり。すなわち俗にいう瘠・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・然し、創作も、筆先の器用さでのみ決するのを正としない自分は、どうかしても、自分と云うその者の本体の裡に戻って考えずにはいられなく成るのである。 男性の中にも、下等な心情の人はある。従って、下等な心情の作家もあり得る。そこ許りを見て、私共・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・ 人類の最も本質的な、最も純粋であるべき結婚、離婚の問題を、最初に而して最後に決する事は心です。心の如何による丈です。〔一九二一年二月〕 宮本百合子 「心ひとつ」
・・・ 観察力のすぐれた読者は、そして皮肉が人生に何事かを決すると思い違いをしている種類の人は、あるいはいうであろう。「新しき塩」が描かれている社会的背景、条件はソヴェトとは全く違う。不良児と浮浪児とはある点で違ったものであるし、まして、ソヴ・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・ 池の囲りを競馬場に仕たてて春と秋とは馬ばかりではなく、町々の、自転車乗が此処で勝負を決するのが常である。 夏は、若い者共の泳場となり、冬は、諏訪の湖にあこがれる青年が、かなり厚く張る氷を滑るのであった。此等の池の美くしいのも只夏ば・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ 人間は、自己の運命を決する時、決して一時間の時を要しない。総ては瞬間にかかっている。準備、そこに到る力を蓄積するには、勿論五年なり十年なりの歳月が要されるだろう。然し、或る運命的な一瞬間と結びついて、始めてそこに決意と決行とが行われて・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・それらの人々の胸の内、或は言葉の上で、大衆と云い民衆と云われるものがどう考えられ会得されているかということが、昨今至るところで耳目にふれる文学の大衆化、民衆化の具体性を決する実際の条件になるのである。 この視点から今日のありようを観察し・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・青春と、その内容と、その内容に対する青年の自覚は、歴史の五十年間を決する社会的大事実なのである。人間はこの世に一度しか生きない。その一度の生命は最も人類的に、最も謙遜なる確乎不抜さで人間的に生き貫かれなければならないのである。〔一九三七年五・・・ 宮本百合子 「若き時代の道」
出典:青空文庫