・・・月見なり、花見なり、音楽舞踏なり、そのほか総て世の中の妨げとならざる娯しみ事は、いずれも皆心身の活力を引立つるために甚だ緊要のものなれば、仕事の暇あらば折を以て求むべきことなり。これを第五の仕事とすべし。 右の五ヶ条は、いやしくも人間と・・・ 福沢諭吉 「家庭習慣の教えを論ず」
・・・知識階級の若い聰明な女性が、そのすこやかな肉体のあらゆる精力と、精神の活力の全幅をかたむけて、兇暴なナチズムに対して人間の理性の明るさをまもり、民主精神をまもったはたらきぶりは、私たち日本の知識階級の女性に、自分たちの生の可能について考えさ・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ それらの急進的な若い男女があふれるような活力と感受性とを傾けて、学内の活動などに吸収されて行った有様は、めざましいものであったろう。ところが彼らが研究会やなにかでイデオロギー的に獲得した輝かしい未来の社会、両性関係の見とり図と、現実の・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ 現に移動劇場の仕事は、よくこの諷刺文学の、小粒な活力を利用してわれわれに見せている。 作家がそういう小粒で便利な武器をどうしてドシドシ作れるか? ほんとに大衆と職場の動きを知らなければならないということになるのである。〔一九三一年・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・すけるために主導力たる階級の文学をおし出し、同時にその連関をもって具体的に現代文学の全野にふくまれているより大きい社会性への可能を、それぞれの道の上に安心して花咲かせるために協力するというよろこばしい活力を発揮し得なかった。 一九四七年・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・加盟団体あわせて一千万人の組織員をもつ民主主義擁護同盟は、組織の大きさだけの活力を発揮しにくい事情におかれていたが、それでも各地におこっている人権蹂躙の問題に具体的に働いた。 同氏が、「平和を守る会」に参加しないことや「知識人の会」に関・・・ 宮本百合子 「五月のことば」
・・・いささかの陰翳もなく調和し 活力を増し箇性を のどかに 発育させる。犇々と思い出が迫り父のなつかしさ!四つ五つの 我にかえる――。 *心に 満ち充ちる愛も金がないので 表し得ない時・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・作家の或るもの、例えばイワーノフなどは革命当時の活力と火花のようなテンポを失い、無気力でいやに念入りな、個人的な心理主義的作風に陥って行ったのである。 これは危い時代であった。質のよい、若いプロレタリアートは自分等の階級の本当の芸術的表・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・父と私との心持の相通じていた程度の濃やかさは御存知ですが、父は自分の死によってまで、かえって私たちに生活力をおこさせ、人生の正道を愛す心を深くさせる、そういう生活を営みました。よく世間では急な永訣のとき、虫が知らせるとか、或る徴候があるとか・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・それは丁度、彼の猛烈な活力が昨夜の頑癬に復讐しているかのようであった。 そうして、彼は伊太利を征服し、西班牙を牽制し、エジプトへ突入し、オーストリアとデンマルクとスエーデンを侵略してフランスの皇帝の位についた。 この間、彼のこの異常・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫