・・・それらのことから派生して、日本の作家はこれまであまり個々の才能を過大に評価しすぎたし、文学創造の過程にある心的な独自性、ほかの精神活動にないメンタルな特性の主張を、おおざっぱに文学の純粋性だの、文学性だのという概念でかためてしまってきた。そ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・一人の見栄坊な婦人がどうこうということで解決のつくことではないことは、複雑な今日の片よった景気の派生物である事件の弁明に際して、その夫人の虚栄心云々が余り強調せられる結果、却って当然の推理となって一般人の常識に反映しているのである。 就・・・ 宮本百合子 「暮の街」
・・・ 能動精神の提唱から派生した以上のような諸問題が、夥しい作家、評論家によって活溌に、然し堂々めぐりの形をもって論ぜられている一方、島崎藤村氏は七年に亙る労作「夜明け前」をこの年の秋に完成した。「夜明け前」の持つ文学上の記念碑的価値は・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・やっぱり、基本的諸問題の解明がなくては、派生する論議はわからないし、民主主義文学運動自体を推進させるために、社会主義的リアリズムは、民主主義文学建設の過程でどう理解されるべきかということが明瞭にされる必要があると思います。これが新日本文学会・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・男女が互に好きだということ、それは性慾から派生した感情、そういう風にはっきり理解して行く。だから自分の性慾が自分を刺戟して或る人間に対する興味を感じた場合、その対手の社会人としての価値で引つけられたかどうかという点はきりはなして考える。その・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫