・・・彼等は依然として浪花節を好んで講談本を読んでいるではないかという風に問題がおこされたのであった。 そして、これ等の論者の言に従えば、これまでの純文学は民衆の真にあるがままの生活に何等ふれるところがない。要するに文学青年どものもてあそびも・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・戦争がはじまったとき、すべての浪花節、すべての映画、すべての流行唄、いわゆる大衆娯楽の全部が戦争宣伝に動員された。大衆文学・大衆小説はその先頭に立った。原稿紙に香水を匂わせるという優にやさしい堤千代も、吉屋信子も、林芙美子も、女の作家ながら・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・道、〔欄外に〕Leading passion for Utari. 周囲の人 母 好人物 ドメスティック 弟 山雄 富次郎 バチェラー一族 姉 浪花節語り K、Sの性格・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・この種の論者は、浪花節を何よりすきと思っている民衆の感情にぴったりするようなものを作家は創造して大衆化しなければならないと主張した。大衆にわかるように書かなければならないと主張した。谷川徹三氏はその「文化均衡論」で、現代は民衆の文化水準と知・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・ 外は星夜の深い闇がいっぱいに拡がってどっかで下手な浪花節をうなって居るのが聞えて来た。 千世子の草履の音と京子の日和のいきな響が入りまじっていかにも女が歩くらしい音をたて時々思い出した様に又ははじけた様に笑う声が桜の梢に消えて行っ・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・それが不思議な縁で、ふいと浪花節と云うものを聴いた。忠臣孝子義士節婦の笑う可く泣く可く驚く可く歎ず可き物語が、朗々たる音吐を以て演出せられて、処女のように純潔無垢な将軍の空想を刺戟して、将軍に睡壺を撃砕する底の感激を起さしめたのである。畑は・・・ 森鴎外 「余興」
出典:青空文庫