・・・日本人のものでは長岡博士の「田園銷夏漫録」とか岡田博士の「測候瑣談」とか、藤原博士の「雲をつかむ話」や「気象と人生」や、最近に現われた大河内博士の「陶片」とか、それからこれはまだ一部しか見ていないが入沢医学博士の近刊随筆集など、いずれも科学・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ 二 地図をたどる 暑い汽車に乗って遠方へ出かけ、わざわざ不便で窮屈な間に合せの生活を求めに行くよりも、馴れた自分の家にゆっくり落着いて心とからだの安静を保つのが自分にはいちばん涼しい銷夏法である。 日中の暑い盛りにはや・・・ 寺田寅彦 「夏」
・・・ 漢土には白雨を詠じたる詩にして人口に膾炙するもの東坡が望湖楼酔書を始め唐韓かんあくが夏夜雨、清呉錫麒が澄懐園消夏襍詩なぞその類尠からず。彼我風土の光景互に相似たるを知るに足る。 わが断腸亭奴僕次第に去り園丁来る事また稀なれば、庭樹・・・ 永井荷風 「夕立」
出典:青空文庫