・・・かけ出した各消防署のポンプも、地震で水道の鉄管がこわれて水がまるで出ないので、どうしようにも手のつけようがなく、ところにより、わずかに堀割やどぶ川の水を利用して、ようやく二十二、三か所ぐらいは消しとめたそうですが、それ以上にはもう力がおよば・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・簡単に内容を紹介すると、まずその第一ページは、消防署で日夜火の手を見張っている様子を歌ってある。第二ページはおかあさんの留守に幼少な娘のリエナが禁を犯してペチカのふたを明け、はね出した火がそれからそれと燃え移って火事になる光景、第三ページは・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・ともかくも、この種の研究を充分に進めた上で、消防署の配置や消火栓の分布を定めるのでなければ決して合理的とは言えないであろうと思われる。 これらの研究は化学者物理学者気象学者工学者はもちろん心理学者社会学者等の精鋭を集めてはじめて可能とな・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・ 自分は正面の窓から消防署の展望塔を眺めた。白ペンキで塗られた軽い骨組みの高塔は深い青葉の梢と屋根屋根の上に聳えて印象的な眺めである。同じ窓から銀杏並木のある歩道の一部が見下せた。どういう加減かあっちへ行く人ばかり四五人通ってしまったら・・・ 宮本百合子 「刻々」
出典:青空文庫