・・・プロレタリア文学の理論、創作方法の問題などが、若干直訳的であったことや、例えば弁証法的創作方法という提案の中には、世界観と創作方法との二つの問題が混同し同時的に提出されていたために、創作の現実にあたって作家を或る困惑に導いたような事実は、当・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・彼女等は決して、褒むべきものと買うべきものとを混同しない丈の確っかりさを持って居るのでございます。其故、芝居にしても其が娯楽である以上は心を楽しませ、小説がたのしみの読書である以上愉快なものであるべきだという考さえございます。其故、内容を深・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・という人間の明智に対する信念によって――ジイドは、また、彼の論敵ら「秩序の愛と暴君の趣味とを混同する」徒輩が、この紀行文から手前勝手な利益を引っぱり出すであろうことをも、はっきりと予見している。しかも彼が敢てこの紀行文を公表するのは、上述の・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・という表現も、創作方法の問題としては、あらゆる現実の生きた姿を現実にある儘の錯綜した相互関係で、動いている有様の儘そこに一定の洞察と意思を持って描くという方法と混同された不明瞭さがあった。 未熟であり、よしやある誤りを含んでいたとしても・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ その微かな閃光、その高まり来る諧調を、誤たず、混同せず文字に移し載せられた時、私共は、真個に、湧き出た新鮮な創作の真と美とに触れられる。昔、仏像の製作者が、先ず斎戒沐浴して鑿を執った、そのことの裡に潜む力は、水をかぶり、俗界と絶つ緊張・・・ 宮本百合子 「透き徹る秋」
・・・公私混同したと表現されている。ジダーノフは二つの雑誌の編輯者が、苦しまぎれにした弁明を、いちおうまともに受けてやっているのだとしか思われない。なぜならこのごろ、日本のような稚い民主社会の編輯者たちでさえ、まさか社長や主筆の「友誼的」推薦原稿・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・あながち志壮なるが故にではなく、ごく古くからありふれた習俗の枠にはまった考えかたで、恋愛と青春の放埒と漠然混同し、その場その場で精神と肉体とを誘い込む様々の模造小路を彷徨しつつ、身を堅める時は結婚する時という風な生き方である。 そういう・・・ 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
・・・ 上野の自働電話 直ぐとなりにバナナのたたき売りあり、電話の話と混同する「ああもしもしええやっちまえ」「あら 何云ってらっしゃるのよ」「畜生!もしもし困っちゃうな、ばななのたたきうりがあるんですよ、こ・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・要するに私は要求と現実とを混同する夢想家に過ぎなかった。 こうして私は自分の才能に失望してかなりに苦しむ。しかし私は思う。私の問題は与えられた物が何であるかに――私の Was にあるのではなかった。私はただ与えられた物を愛し育てるために・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
・・・なぜなら道の代表者を特殊思想の代表者と混同するような馬鹿者が出てくるからである。 小生はこの考えが老父の了解を得ることを信じて右の手紙を発送した。 これが一つの私事の顛末である。・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫