・・・の意味で彼等にとっても一つの社会的刺戟、張り合いとなり、新たな社会への道と新たな文学発生の可能性とを感じさせていたプロレタリア文学運動の一時的後退は、ブルジョア・インテリゲンツィア作家達をも、社会的な混迷・無力感に悩したのであった。 今・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・其人の圏境、その人の持って生れて来たに違いない内在力などが、明に頭に考えられるより先に、自他を混同した我等の不安、混迷になってしまうのである。 人は、忽ちその一事実の上に絶対価値批判を組立てようとする。或る概論の実証とし、また反証としよ・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・ もし、おのおのの主人公をして事そこに到らざるを得ないようにした錯綜、また〔三字伏字〕配置された紛糾混迷などを描き出して、せめては悲劇的なものにまで作品を緊張させ得たら、人は何かの形で今日の現実に暴威をふるう権力の害悪について真面目な沈・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・女性の先輩たちの動きにその混迷が見られたし、文学、美術、科学の面でもそれぞれの形で同様のことがあった。 今年は、世相としては一層いりくんだ現象が見られるようになるであろうが、それが予想されるからこそ猶私たちは、自分の生活を内と外とから見・・・ 宮本百合子 「身についた可能の発見」
・・・作家も評論家も、この混迷からまったく自由にはなっていない。日本の民主主義革命の現在の本質をはっきりつかまないところからおこるブルジョア民主的な自我確立論、または、実際の批評にあらわれたような部分的形象論のなかに作品全体の評価を埋没させてしま・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・新感覚が清少納言に比較して野蛮人のごとく鈍重に感じられると云うことは、清少納言の官能が文明人のごとく象徴的混迷を以って進化することが不可能であったと感じられることと等しくなる。生活の感覚化 或る人は云う。「感覚派も根本から感・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫