「美しき月夜」は一九一九年の夏アメリカのレーク・ジョウジという湖畔に暮したころに書かれた。この作品は、われわれの人生に災難という形であらわれる偶然の力につよく印象づけられたことがあって、それが題材にされた。それから数年後に書・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」
・・・生きて強壮な人々は、平和のための会議を何故風光明媚なジェネの湖畔でだけ開くのであろう。 やがてそろそろ薄闇の這いよって来た砲台の裏からまわって、傍のいら草の中に錆びた空罐などの散っている急な小径を下って来た。すると、今朝の霜でゆるんだま・・・ 宮本百合子 「女靴の跡」
・・・景色のいいスイスのジェネヴァ湖畔にあるパレス・ホテルは、七百室の大ホテルであるが、MRAは二十五万ドルでこれを買った。ロサンジェルスの本部を買うために五十万ドル投げ出したし、ミシガン州のマキナック島には、訓練所を維持している。MRA映画「グ・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・ 其方は如何でございますか、此の紐育から二百哩程隔った湖畔は、近頃殆ど毎日の雨に降り籠められて居ります。或時は、俄に山巓を曇らせて降り注ぐ驟雨に洗われ、或時はじめじめと陰鬱な細雨に濡れて、夏の光輝は何時となく自然の情景の裡から消去ったよ・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ ○ 私が去年の夏行っていた、或る湖畔には、非常に沢山黒人がいた。白い皮膚を持った人々が彼等をどんなに待遇するか、どんな心で彼等を見ているか。 解放された奴隷は、又解放された奴隷として彼等の子を遺して行く・・・ 宮本百合子 「一粒の粟」
・・・吾人はレマン湖畔シーヨンの城にこの七人の猛き霊的本能主義者の足跡の残れるを知る。 さらにルーテルを見よ、クリストを見よ、霊の高翔する時物質の苦を忍ぶはやすい事である。一生を衆人救済と贖罪とに送って十字架に血を流したる主エスはわが主義の証・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫