・・・ラインハルトといえばドイツの近代劇と演出の泰斗である。 ラインハルトの下で女優となったエリカ・マンは、やがてハンブルグでおなじ俳優であるグリュントゲンスと結婚した。グリュントゲンスは才能はあったが、あとではナチスに加って、ベルリン国立劇・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ この間何かで、ベルリンのピスカトールが、ブルガーコフのモスクワで上演禁止になった作品を演出する計画をたてているというようなうわさをよんだ。 これはどうしたことだろうか? トロツキーが暗にほのめかすように、ソヴェトは天才を生かさない・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・要するに吉田首相とその乾分は世界のブルジョア政治家も裏面でしかあらわさないような男としての醜態を参議院で演出してもう民自党に投票してくれないでもいいんだということを天下に声明しました。 男が酒をのんで女にからむということは恐らく日本にだ・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
・・・ 自分が終りまで遂にたんのう出来なかった原因の一つは、脚本そのものが余り光彩陸離たるものでなかったことと、二つには、演出する俳優の心の態度が、ぴったりと自分の胸に響いて来なかったことである。 一番目「恋の信玄」などは、早苗姫が自殺し・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・を見物したが、作者の諷刺と演出者の誇張しすぎて表現派風なこりかたは、民衆によくわからなかった。 リベディンスキーは、ロシア・プロレタリア作家の頭株の一人であるが、その長篇「英雄の誕生」は一般の注意を呼び起すと同時に、疑問をも引おこした。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・三好十郎作、杉本良吉演出、井上正夫、水谷八重子、岡田嘉子などと出ていて、これも面白くみました。私は先日来、ゴーリキイの研究を本にするために大変勉強したので、一息いれるのと暑さにうだったのとで、この数日一寸のびました。 この前のお手紙で国・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・タラーソヴァと芸術座の演出者は、こんにち地球にのこっている資本主義の社会の上流で、アンナ・カレーニナの悲劇が生きられていることを歴史的・人間的悲劇と腐敗の現実として、しんからつかんでいて、云ってみれば、トルストイ自身が自然発生的な批判とその・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・数千のこのような見物に向って、オペラ用の大舞台がそろそろと巨大な幕をひらき、芸術座の演出法で第一場を現した。 ――桜の園――然しこれは、何だか居心地わるい桜の園だ。すべてが大きすぎる。ラネフスカヤの家に、オペラの大道具が突立っている。オ・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・最後の一、二ページで、作者は、亮子にほとんど過重な内的容積をもり込んでいるのであるが、「近頃どんな映画を見ても演出を見ても『なんだここが見せ場か』『ここが山か』と案外その見せ場や山が大したものでないのにガッカリしている」だが「こんなことは何・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・と土地柄を見て演出効果を考えていたことも相馬黒光女史の「明治初期の三女性」の中に語られている。明治十六年の秋京都で「女子大演説会」というものを開いたときには、太刀ふじという七つか八つの女の子に前座をつとめさせたこともあった様子である。 ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
出典:青空文庫