-
・・・ 他人のようにはっきりこれ等の点を考えると、元、私は何かの力でそれを更え、雄々しい、創造的な、自発力に満ちた人に代えたいと思い、焦れ、苦しみ、涙を出し、Aを苦しめた。今はもうまるでその点では自分と彼との生活の中心をきり離してしまった。・・・
宮本百合子
「一九二三年夏」
-
・・・人々は農作物の為めに一雫の雨でもと待ち焦れている。二百十日が翌日に迫っていたので、この地震は天候の変化する前触れとし、寧ろ歓迎した位なのであった。果して、午後四時頃から天気が変り、烈しい東南風が吹き始めた。大粒な雨さえ、バラバラとかかって来・・・
宮本百合子
「私の覚え書」