・・・なお、売れても売れなくても、必ず四十円の固定給は支給する云々の条件に、申し分がなく、郵便屋がこぼすくらい照会の封書や葉書が来た。 早速丹造は返事を出して曰く、――御申込みにより、貴殿を川那子商会支店長に任命する。ついては身元保証金として・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・悦気面に満ちて四百五百と入り揚げたトドの詰りを秋子は見届けしからば御免と山水と申す長者のもとへ一応の照会もなく引き取られしより俊雄は瓦斯を離れた風船乗り天を仰いで吹っかける冷酒五臓六腑へ浸み渡りたり それつらつらいろは四十七文字を按ずる・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・とにかくその七月いっぱいに私のした仕事は、一、北極熊剥製方をテラキ標本製作所に照会の件一、ヤークシャ山頂火山弾運搬費用見積の件一、植物標本褪色調査の件一、新番号札二千三百枚調製の件 などでした。 そして八月に・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・希望者は事務所へ照会せよ。 ホワイト・チャペル通の交叉点を過ると、街の相貌がだんだん違って来た。家並が低くなった。木造二階家がよろめきながら立っている。往来はひろがり、タクシーなんか一台も通らない。犬もいない。木もない。そして人も少・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫