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・・・兵隊の旗も土人の子もみんな熱砂の波のかなたにかくれて、あとにはただ風の音に交じってかすかにかすかに太鼓とラッパの音が残り、やがてそれも聞こえなくなるのである。 この序曲からこの大団円に導く曲折した道程の間に、幾度となくこの同じラッパの単・・・
寺田寅彦
「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
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・・・これだけで芝居のうそが生かされて熱砂の海が眼前に広げられる。ホテルの一室で人が対話していると、窓越しに見える遠見の屋上でアラビア人のアルラーにささげる祈りの歌が聞こえる。すると平凡な一室が突然テヘランの町の一角に飛んで行く。こういう効果はお・・・
寺田寅彦
「映画時代」