・・・に目醒め、朝田医院をとび出した志摩が、やがて「どうもいままでのやり方は青年の論理だった。爛熟した洞察が必要だ」と思いはじめる。「今までよりずっと大人になるのだ、そして勇気をもち、明白な判断を少しもこだわらずに、キチンとしてゆく、無駄な神経を・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・きょうのあらゆる社会の現象は、その間に発展し、複雑化し、爛熟した世界の資本主義がもたらす必然的な諸事情に関係していて、その激甚な矛盾、相剋、その発展の統一の方式が現代の世紀の課題であるということを、一九三三年に、ルネッサンスを叫んだ人々は認・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・フランスの所謂教養の中では、十九世紀以来の個性の開花とその爛熟とが飽和点にまで達していたように見える。社会の全機構がその影響の下にあり、ガムランによって代表された軍事部門の内奥さえ、その軍人気質を情操として見た場合、殆ど哲学的に洗煉されて、・・・ 宮本百合子 「よもの眺め」
出典:青空文庫