・・・子供をたくさんと云っても、女として耳に響いて来る可愛い声々は、そのたくさんの子供たちの丈夫なことを願っていて、いろいろの物資のこともすぐ念頭に浮ぶ。その間にはやはり落着けないものがある。たくさんの幼い子供をもった自分たちと、その父親としての・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・あながち食物の潤択さばかりにもない。物資の豊富さばかりにもない。 相当の空き腹で、相当に雨水のしみこんで来る靴で、少年たちが猶喜々としているとすれば、つまりは自分たちの胸底にあつく蠢いている自分たちの成長の可能への情熱の力によるのではな・・・ 宮本百合子 「今日の耳目」
・・・ 隣組ができて、そして物資の問題が切迫するようになって来てから、婦人の政治的関心が高まったということも聞くけれども、「贅沢は敵だ」というような標語をその文字の意味で理解するようになったというのが、婦人の政治的成長というのは、あまり、安易・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・板橋の場合、発見した隠匿物資は、配給所がごまかしていたものではなかったのだから、委員会は、先ず連合軍に申し出たらよかったろう。連合軍は或は政府に通告し、政府は営団に一旦渡せというかもしれぬ。そこが区民としては虫が好かない点だったろう。虫のす・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・ 各地で隠匿物資の摘発が行われている。これには生活擁護問題の若い人々やその他種々の農民組合、労働組合の若い人々が大きい動力となって働いている。青年の本来の心にある正義心は、自分達の愚弄された青春をわが手にとり戻そうとしてこれ等の動きに現・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・そのなかに、あちらにいたときは物資が欠乏しているということを頻りにきかされていたところ、帰って見たら物資は店頭にあふれていて、これでこそ興亜の大業に進む国の姿であると愉快に思ったという意味が語られていた。私たち一般人の生活の日常では、炭や米・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・ 物資の問題と家計の配慮は、特別女の日常には切実で、そのことでは、一般的な共感におかれているわけだが、文化のこととしてこの間の消息を眺めると、ここにも奇妙な現象がある。女子大学の家政科というようなところで、生計指導のための展覧会を行った・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・国会で隠退蔵物資特別調査委員会が出来たことは、政府も権力をもちつづけようとするためには、安定本部の理論数字で現実はごまかしきれないことを認めて来た証拠である。 この「昭和二十三年の勤労者の家計について」を読んでみると非常に変なところがい・・・ 宮本百合子 「ほうき一本」
・・・米のないこと、マッチのないこと、それはどう解決されるのであろうか、政府の方針を守って買い溜をしなかったものは今日物資に不自由し、命を守らずして買いだめしたものは、不自由を感じていない。正に正直な者が罰せられたのであります。と演壇からいわれる・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・申告すべき退蔵物資の十六種目一覧表も載った。ここに又一つ奇妙なことがある。主要食糧は、なるほど直接人命にかかわる性質をもっている。だが、農民は一年の労苦を傾けて、それを生産した者である。供出したがらないのは、したがらない理由がある。それにも・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
出典:青空文庫