・・・何を話しているかはわからなかったが、ただ一瞥でその時に感ぜられたことは、その日本の紳士たちのその西洋人に対する態度には、あたかも昔の家来が主人に対するごとき、またある職業の女性が男性に対するごとき、何かしらそういったような、あるものがあるよ・・・ 寺田寅彦 「試験管」
・・・上のほうのは言わば乾性、あるいは男性的の痛さで少し肩に力を入れて力んでいればなんでもないが腰のほうへ下がって行くと痛さが湿性あるいは女性的になって、かゆいようなくすぐったいような泣きたいような痛さになる。動かすまいと思っても腰をひねらないで・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・鷺娘がむやみに踊ったり、それから吉原仲の町へ男性、中性、女性の三性が出て来て各々特色を発揮する運動をやったりするのはいいですね。運動術としては男性が一番旨いんだそうですが、私はあの女性が好きだ、好い恰好をしているじゃありませんか。それに色彩・・・ 夏目漱石 「虚子君へ」
・・・左れば広き世の中には随分悪婦人も少なからず、其挙動を見聞して厭う可き者あれども、男性女性相互に比較したらんには、人非人は必ず男子の方に多数なる可し。此辺より見れば我輩は女大学よりも寧ろ男大学の必要を感ずる者なり。 婦人に七去と言う離縁の・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・れを人の大倫と称し、社会百福の基、また百不幸の源たるの理由は、前に陳べたる所を以て既に明白なりとして、さて古今世界の実際において、両性のいずれかこの関係を等閑にして大倫を破るもの多きやと尋ぬれば、常に男性にありと答えざるを得ず。西洋文明の諸・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・ 自然は、人間の恋愛を唯だ男性と女性との+《プラス》だけでは終らせず、精神に於て、男をA、女をBとすれば A+A×B:B+B×Aという風な関係にすると思われます。そして、数学と全然違うところは、これらの関係がまるで逆になって、+《プ・・・ 宮本百合子 「愛は神秘な修道場」
・・・ここでは服従すべきものとして人民全体が扱われていたから、昔から男性に服従すべきものとして考えられていた婦人の社会的地位の改善などということはまったく眼の中に入れられていなかった。今度改正された憲法は、その中に、すべての人民は法律の前に平等で・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・云々と一方的にだけいっていて、そのような婦人が存在する社会の他の現実関係として、当時の男性が婦人に対して持っていた習俗なり態度なりについては、男自身のこととしてまるで省察の内にとりあげていないのは興味があるところではなかろうか。婦人の知って・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・ もし日本の習俗の中で男性というものが女性にとって、良人候補者、あるいは良人という狭い選択圏の中でばかりいきさつをもって来るものでなかったら、異性の間の友情について常に何かロマンティックな色どりを求めるいくらか病的な感傷性も、きっとずい・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・女性と男性との差は、斯う云う心持に於ても何か異っては居ないだろうか。 ○彼等の運命の裡に於て、長与氏は、性慾を極端にまで厭うべき文字で呼んで居る。「結婚した許りの夜と同じく獣の真似をして居た。」或は「獣的遊戯」と呼ん・・・ 宮本百合子 「黄銅時代の為」
出典:青空文庫