・・・将来なされうべきある二つの画期的な発見のどちらが先に行なわれるかは偶然的な事情によって左右されうるであろう。そういうわけであるから、今から十年後の物理学界を予想する事はいかなる大家にも困難であろう。いついかなる問題が勃興して、現在の第一線の・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・リツェリ、ヴィヴィアニ、オットー・フォン・ゲーリケ、フック、ボイルなどといったような人がはなはだ粗末な今から見れば子供のおもちゃのような道具を使って、それで生きた天然と格闘して、しかして驚くべき重大な画期的実験を矢継ぎばやに行なったのがそも・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・私はその言葉を心に印されて今なお記憶しているのであるけれども、そのような批評を可能ならしめた、階級感情の小市民的分裂は、この二三年間の画期的鍛錬によって、一般的に統一の方向にむかい、もとの低さに止ってはいないのである。 先月号の『行動』・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・本年は、画期的な生産拡大による労働力の需要増と、物価騰貴、熟練工引止めなどの理由から、一般に賃銀は高くなった。もっとも低下していた昭和七年頃に比べると遙かに上っているが、男と女との差は埋められていないのである。 婦人の性の本来は生殖に重・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 菊池寛のこの人生と歴史へのテーマの本質のありようが、芥川とどんなに相反するものであったかということは、大正末期、欧州大戦後の日本の社会が画期的波瀾にめぐり会ったとき、芥川はあのような生涯をとじ、菊池寛は「真珠夫人」等によって大衆文学の・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ さて、こういうように、日本の社会史の上でも画期的な規模と深さとをもってまきおこされた混乱に処して、わたしはおさなく、しかし純粋な憤懣で焼かれるしか心の表現の方法を知らなかった。一九三三年一月の『プロレタリア文学』に発表された「一連の非・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・これは社会的に生きる人類の幸福を問題とする現実的な幸福探求の道程にとっては、実に画期的な発展であった。人間が社会以外のところに生存しないものであるという生存の条件へのはっきりした理解は、社会と個人とのいきさつの研究の間に幸福の課題をもといて・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・を組織した画期的な事実も無視されている。加盟団体あわせて一千万人の組織員をもつ民主主義擁護同盟は、組織の大きさだけの活力を発揮しにくい事情におかれていたが、それでも各地におこっている人権蹂躙の問題に具体的に働いた。 同氏が、「平和を守る・・・ 宮本百合子 「五月のことば」
・・・ 一九二九年から三〇年へかけてソヴェトの芸術がこのようにして生産の場所へ進出し、それと連帯をもった経験は、プロレタリア芸術史の上に実に画期的影響を与えたのである。 複雑な再建設期の社会主義的前進の意味を理解しない右翼「同伴者」作家群・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・、一九三三年頃まで文学の主潮はプロレタリア文学にあり、日本の歴史のふくむ複雑な数多の原因によってこの潮流の方向が変えられると共に、文学は、その背景である社会一般の生活感情にあらわれた一種の混迷とともに画期的な沈滞と無気力に陥った。 この・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
出典:青空文庫