・・・新婦の為めに老夫婦は骨肉の父母に非ざる尚お其上に、年齢も異なり、衣服飲食百般の事に就て思想好嗜の同じからざるは当然の事にして、其異なる所のものをして相互に触れしむるときは、自然の約束に従て相衝かざるを得ず。都て是れ双方の感情を害する媒介たる・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ 余をもって今の第二世の後進生を見れば、余が三十余年前に異なり、社会の事物はすでに文明開進の方向を定めて変化あるべからず。時勢の方向に変化なければ、身の方向を定むるもまた、はなはだ易し。学業を勤むるにも、これを勤めてその行く先は、所得の・・・ 福沢諭吉 「成学即身実業の説、学生諸氏に告ぐ」
・・・ そもそも明治年間は元禄に異なり。その異なるは教育法の異なるに非ず、公議輿論の異なるものにして、もしも教育法に異なるものあらば、これをして異ならしめたるものは、公議輿論なりといわざるをえず。而して明治年間の公議輿論は何によりて生じたるも・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・然るに今、多勢の妾を養い、本妻にも子あり、妾にも子あるときは、兄弟同士、父は一人にて母は異なり。夫婦に区別ありとはいわれまじ。男子に二女を娶るの権あらば、婦人にも二夫を私するの理なかるべからず。試に問う、天下の男子、その妻君が別に一夫を愛し・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・凡兆の句複雑というほどにはあらねど、また洒堂らと一般、句々材料充実して、かの虚字をもって斡旋する芭蕉流とはいたく異なり。芭蕉これに対して今少し和歌の臭味を加えよという、けだし芭蕉は俳句は簡単ならざるべからずと断定してみずから美の区域を狭く劃・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
出典:青空文庫