・・・ 婦人の修学はかなりまで自由にやらせる事に異議はないようだが、しかしあまり主唱し奨励する方でもないらしい。「他の学科と同様に科学の方も、なるべく道をあけてやらねばなるまい。しかしその効果については多少の疑いを抱いている。私の考えでは・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・これはもちろん、形式上の分類法からすれば当然のことであって、これに対して何人も異議を唱えるものはないであろう。しかしまたここに少しちがった立場に立つものの見方からすると、このような区別は必ずしも唯一無二ではないのである。早わかりのするために・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・それがまた特に合議者間に平素から意思の疎通を欠いでいるような場合だと、甲の持ち出す長所は乙の異議で疵がつき、乙の認める美点は甲の詮索でぼろを出すということが往々ある。結局大勢かかればかかる程みんなが「検事」の立場になって、「弁護士」は一人も・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・十五が十三より二つだけ多いことにはどうにも異議の申し立てようがないからである。 しかしまた、数字のレコードで優勝したとしても、その人が、その数字の代表する量の大小以外の点でもすぐれているという証拠には決してならない。これは明白なことであ・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・その時代にわたくし達は人と成ったので、今之に対して異議を言うものは一人もない。わたくし達は又既に百花園の荒廃に帰して今更これを訪うべき価値のないことをも熟知していた。さればこの場合に之を云々するのは、恰も七十の老翁を捉えて生命保険の加入契約・・・ 永井荷風 「百花園」
・・・無論、斯くいうのは、色々のカント学派の人々から色々の異議があるでもあろう。私は今これらの議論に入らない。とにかく、カント哲学においては、先験感覚論の始にいっている如き、我々の自己が外から動かされるという如き主客の対立、相互限定ということが根・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・是れも本文の通りにて異議なけれども、歌舞伎小唄浄瑠璃を見聴くべからず、宮寺等へ行くことも遠慮す可しとは如何ん。少しく不審なきを得ず。抑も苦楽相半するは人生の常にして、茲に苦労あれば又随て歓楽あり、苦楽平均して能く勉め能く楽しみ、以て人生を成・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・ 夫婦親愛恭敬の徳は、天下万世百徳の大本にして更に争うべからざるの次第は、前既にその大意を記して、読者においても必ず異議はなかるべし。そもそも我輩がここに敬の字を用いたるは偶然にあらず。男女肉体を以て相接するものなれば、仮令えいかなる夫・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・一 余死せば朝日新聞社より多少の涙金渡るべし一 此金を受取りたる時は年齢に拘らず平均に六人の家族に頭割りにすべし例せば社より六百円渡りたる時は頭割にして一人の所得百円となる計算也一 此分配法ニ異議ありとも変更を許さず右之通・・・ 二葉亭四迷 「遺言状・遺族善後策」
・・・婦人たちはみんなひどく激昂していましたが何分相手が異教の論難者でしたので卑怯に思われない為に誰も異議を述べませんでした。シカゴの技師ははんけちで叮寧に口を拭ってから又云いました。「なるほど実にビジテリアン諸氏の動物に対する同情は大きなも・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫