・・・くたくたになって二階の四畳半で一刻うとうとしたかと思うと、もう目覚ましがジジーと鳴った。寝巻のままで階下に降りると、顔も洗わぬうちに、「朝食出来ます、四品付十八銭」の立看板を出した。朝帰りの客を当て込んで味噌汁、煮豆、漬物、ご飯と都合四品で・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・手つだいの人達が気の毒に思って自分達の方へ寝かしてくれ、一晩でかぶとを脱ぎ、昨晩は、さてこれから一合戦と覚悟をきめていたら、思いもかけず眠り通して六時半の太郎の目覚ましで、私も起きた時には思わず床の上に坐って、しげしげと泰子の寝顔を眺めまし・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・く誘惑に負け、その青春を蝕ばまれるのをふせぎ又指導するために、厚生省が産業報国の機関を動員して、優良会員数名ずつを行動隊に組織し、工場地帯、玉の井、亀戸その他の盛り場へ送り、危い一歩の手前で若者たちを目覚ましてやる方策が決定した。結構なこと・・・ 宮本百合子 「女性週評」
出典:青空文庫