・・・中学に入っても二人は画を書くことを何よりの楽にして、以前と同じく相伴うて写生に出掛けていた。 この某町から我村落まで七里、もし車道をゆけば十三里の大迂廻になるので我々は中学校の寄宿舎から村落に帰る時、決して車に乗らず、夏と冬の定期休業ご・・・ 国木田独歩 「画の悲み」
・・・約なるが故に、一家貧にして衣食住も不如意なれば固より歌舞伎音曲などの沙汰に及ぶ可らず、夫婦辛苦して生計にのみ勉む可きなれども、其勉強の結果として多少の産を成したらんには、平生の苦労鬱散の為めに夫婦子供相伴うて物見遊山も妨なきことならん。是亦・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・ともあらんなれども、これは神学の言にして、我輩が通俗の意味に用うる道徳は、これを修めんとして修むべからず、これを破らんとして破るべからず、徳もなく不徳もなき有様なれども、後にここに配偶を生じ、男女二人相伴うて同居するに至り、始めて道徳の要用・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫