・・・のどじょう汁と皮鯨汁、道頓堀相合橋東詰「出雲屋」のまむし、日本橋「たこ梅」のたこ、法善寺境内「正弁丹吾亭」の関東煮、千日前常盤座横「寿司捨」の鉄火巻と鯛の皮の酢味噌、その向い「だるまや」のかやく飯と粕じるなどで、いずれも銭のかからぬいわば下・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・無数の人々の中で何故ある人々と人々とのみが相合うか。そしてせっかく相合い、心を傾けて愛し合いながら終わりを全うすることができないで別れねばならなくなるのか。仏教では他生の縁というような考え方をするが、かりそめに対すれば、こうしたこともただか・・・ 倉田百三 「人生における離合について」
・・・ されば堯典記載の天文が、今日の科學的進歩の結果と相合はず、その十二宮、二十八宿を東西南北の相稱的位置に排列せることが、天文の實際にあはざることも、もとより當然のことなり。この堯典の記事は天文の實地觀測に立脚せるものには非ずして、占星思・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・ ――大地、海水と相合うて、その形まどかなること手毬の如くにして、天、円のうちに居る。たとえば、鶏子の黄なる、青きうちにあるが如し。その地球の周囲、九万里にして、上下四旁、皆、人ありて居れり。凡、その地をわかちて、五大州となす。云々。・・・ 太宰治 「地球図」
・・・『説文』に曰く電は陰陽の激曜するなりとはちと曖昧であるが、要するに陰陽の空中電気が相合する時に発する光である。遠方の雷に伴う電光が空に映るのだが、雷鳴の音は距離が遠いのと空気の温度分布の工合で聞えぬのである。稲妻のぴかりとする時間は一秒の百・・・ 寺田寅彦 「歳時記新註」
・・・故に夫婦家に居るは人間の幸福快楽なりというといえども、本来この夫婦は二個の他人の相合うたるものにして、その心はともかくも、身の有様の同じかるべきにあらず。夫婦おのおのその親戚を異にし、その朋友を異にし、これらに関係する喜憂は一方の知らざる所・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・自ぼれの強い女がこれならと自信をもって居た歌が一も二もなくとりすてられたのをふくれてわきを向いて額がみをやけにゆらがす女もあるし意外のまぐれあたりに相合をくずすものもあるなどいずれもつみのない御笑嬌で有る。この人達の中で月と日とのようなかが・・・ 宮本百合子 「錦木」
出典:青空文庫