・・・れ候、天保できの女ワッペウと明治生まれの旧弊人との育児的衝突と来ては実に珍無類の滑稽にて、一家常に笑声多く、笑う門には福来たるの諺で行けば、おいおいと百千万両何のその、岩崎三井にも少々融通してやるよう相成るべきかと内々楽しみにいたしおり候・・・ 国木田独歩 「初孫」
・・・使った料理鍋、禹の穿いたカナカンジキだのというようなものを素敵に高く買わすべきで、これはこれ有無相通、世間の不公平を除き、社会主義者だの無産者だのというむずかしい神の神慮をすずしめ奉る御神楽の一座にも相成る訳だ。 が、それはそれでよいと・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・先日おいでの折、男子の面目は在武術と説き、諸卿の素直なる御賛同を得たるも、教訓する者みずから率先して実行せざれば、あたら卓説も瓦礫に等しく意味無きものと相成るべく、老生もとより愚昧と雖も教えて責を負わざる無反省の教師にては無之、昨夕、老骨奮・・・ 太宰治 「花吹雪」
出典:青空文庫