・・・ロシアの民衆が過去にもっていた歴史的な桎梏の性質と、今日の事情との間に十九年の歳月が与えた飛躍の実質を看取したであろう。旧社会で、卑俗な日常の幸福の可能が、多く無知と無気力と批判力の喪失にかかっていることを洞察し、それに抗したかぎりジイドは・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ 私は、日本のジャーナリズムにそれぞれ今日の立役者として今日活躍している何人かの人々の性格、人間的動きの中に、ルースについてマクドナルドが観察している点が尠からず看取されるところに深い感興をもった。菊池寛氏をはじめ手近に想い起される日本・・・ 宮本百合子 「微妙な人間的交錯」
・・・彼は民衆の力の勃興を眼前に見ながら、そこに新しい時代の機運の動いていることを看取し得ないのであった。正長、永享の土一揆は彼の三十歳近いころの出来事であり、嘉吉の土一揆、民衆の強要による一国平均の沙汰は、彼の三十九歳の時のことで、民衆の運動は・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫