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・・・その掛茶屋は、松と薄で取廻し、大根畠を小高く見せた周囲五町ばかりの大池の汀になっていて、緋鯉の影、真鯉の姿も小波の立つ中に美しく、こぼれ松葉の一筋二筋辷るように水面を吹かれて渡るのも風情であるから、判事は最初、杖をここに留めて憩ったのである・・・
泉鏡花
「政談十二社」
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・・・ 白雪の飛ぶ中に、緋鯉の背、真鯉の鰭の紫は美しい。梅も松もあしらったが、大方は樫槻の大木である。朴の樹の二抱えばかりなのさえすっくと立つ。が、いずれも葉を振るって、素裸の山神のごとき装いだったことは言うまでもない。 午後三時ごろであ・・・
泉鏡花
「眉かくしの霊」