・・・一事に功を奏すれば、したがってまた一事に着手し、次第に進みてやむことなくば、政府の政は日に簡易に赴き、人民の政は月に繁盛をいたし、はじめて民権の確乎たるものをも定立するを得べきなり。余輩、つねに民権を主張し、人民の国政にかかわるべき議論を悦・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・而してその変革に着手せんとするも、今日の勢において、よく導きて古に復するを得べきや。今の法律を改めて旧套に返るべきや。平民の乗馬を禁ずべきや。次三男の自主独立をとどむべきや。 これを要するに、開進の今日に到着して、かえりみて封建世禄の古・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・故に今後は、我輩の筆力のあらん限り、読者と共にこの消防法に従事して、先ず婦人の居を安からしめ、漸くその改良に着手せんと欲するものなり。 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・満州侵略に着手した田中義一の内閣に外交官であった吉田茂が、この減刑運動を、国内の民主勢力にたいする一つの均衡物として利用しようとするなら、それは一つの国際的な民主主義にたいする罪悪であるとおもう。 三 こう・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・ 一九二八―二九年、ソヴェト生産拡張五ヵ年計画が着手されてから、社会主義社会建設に向って躍進しはじめたのは、直接生産に従事している労働者ばかりではない。画家も、作家も、キネマの製作者も総動員を受けた。彼等芸術労働者は、新しいソヴェト生産・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・方では、前年ヴェノスアイレスの国際ペンクラブ大会に日本代表として出席した島崎藤村が、大会の反ファッシズムに高まった雰囲気から、彼独特の用心ぶかさで日本の立場を守ってかえって来て、日本ペンクラブの創立に着手しはじめている時であった。また他の一・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・インガは、この三月内に托児所を設けることを決定し、それは着手されている。「私はあなたの自尊心のために、そこいら中の壁をこわしてはいられない。換気設置は次の四半期にします。もう決定していることですよ。」「俺をやっつけることをやめたくな・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・ 宮本顕治があのように不自由して獄外に生活していたころ着手して、未完成のままにおかれた「乳房」を宮本が生きて、これから先何年もそこですごさなければならない見当さえつかない未決にまわった記念のために、ちゃんとした小説に書き上げたいと思う熱・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・ 同じ三・一五の被告であった徳田球一、志賀義雄などの人々が、永い獄中生活にもかかわらず、一九四五年十月に解放されてからすぐ共産党の合法的活動に着手したことを思いあわせると、私たちは同じ共産党員といわれる人々の中に、非常な大きい差別がある・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
・・・ ブルジョア文化史のある一定段階の現象として過去三、四年来の日本の作家の間に著しく現れた文章道への関心・熱中にともなわれ、心理学者がその分析・整理・理論づけに着手されるようになった一例として、私は、この著者の努力に冷淡であり得ないのであ・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
出典:青空文庫