・・・そのような場合に、短期の材料から得た週期が単に偶然的のものである場合もあるが、またそうでない場合がある。ある期間だけ継続する週期的現象の群が濫発的に錯綜して起る時がそうである。 これはただ一つの類例に過ぎないが、厄年の場合でも材料の選み・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・ 過去はこれらのイズムに因って支配せられたるが故に、これからもまたこのイズムに支配せられざるべからずと臆断して、一短期の過程より得たる輪廓を胸に蔵して、凡てを断ぜんとするものは、升を抱いて高さを計り、かねて長さを量らんとするが如き暴挙で・・・ 夏目漱石 「イズムの功過」
・・・明治、大正のブルジョア文学の潮流においては、仮にそれはどのように孤立的、短期、且つ不成功であったとしても、一度も「抽象的な情熱」という自覚をもって云われたものはなかった。二葉亭の一生にしろ、北村透谷の生涯にしろ、樗牛、漱石、芥川、すべてこれ・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
出典:青空文庫