・・・を、徳田秋声、上司小剣等の作家も久しぶりにそれぞれその人らしい作品を示した。そして当時「ひかげの花」に対して与えられた批評の性質こそ、多くの作家が陥っていた人生的態度並びに文学作品評価についての拠りどころなさ、無気力、焦慮を如実に反映したも・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・を『中央公論』に連載中の島崎藤村はもちろん、永井荷風、徳田秋声、近松秋江、上司小剣、宮地嘉六などの諸氏が、ジャーナリズムの上に返り咲いたことである。 このことは、ブルジョア文学の動きの上に微妙な影響を与えたばかりでなく「ナルプ」解散後の・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・日本でも初期の田山花袋や徳田秋声のような自然主義作家は、両性の複雑な交渉の底に赤裸々な生物的本能だけを発見している。 資本主義社会の現実が、両性関係に齎しているあらゆる偽善、恋愛と結婚の「神聖」論に対して加えられた唯物論者達の打撃は、決・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ そういう見地から見ると、漱石の散文は秋声の「あらくれ」「黴」などからみるとずっと、弱い。志賀直哉の散文はよくやかれた瓦できっちりとふかれた屋根屋根の起伏の美しき眺望のように見るものの心にうつるたしかさをもっている。が、生活の中からせり・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・の作者がある期間室生犀星、芥川龍之介、徳田秋声の芸術に接近したのも、前にいったような作者の一面とのつながりにおいて見れば、それが単なる偶然ではなかったことを私たちは理解するのである。作者は、古風でやかましやの学問ある医者を父に持ち、和歌や俳・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・徳田秋声、菊池寛、久米正雄等の作家たちが、震災以来今日までの十五年間に生きて来た社会的な道すじ、及び今日それぞれの人々が占めているこの社会での在り場所というものを、自ら読者に考えさせる言外の暗示を少なからず含んでいるのである。 この座談・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
出典:青空文庫