・・・たとえば、学校の先生……ある人がいうように何でも大学に入って学士の称号を取り、あるいはその上にアメリカへでも往って学校を卒業さえしてくれば、それで先生になれると思うのと同じことであります。私はたびたび聞いて感じまして、今でも心に留めておりま・・・ 内村鑑三 「後世への最大遺物」
・・・英国の王家が月桂詩人の称号をスウィンバーンに与えないで、オースチンに年々二、三百磅の恩給を贈るのは、単に王家がこの詩人に対する好悪の表現と見ればそれまでである。けれども国家の与うべき報酬は、一銭一厘たりとも好悪によって支配さるべきではない。・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・その蒼白い疲れた顔を見た人は、それが世界のキュリー夫人であり、ノーベル賞の外に六つの世界的な賞を持ち、七つの賞牌を授けられ、四十の学術的称号をあらゆる国々から捧げられているキュリー夫人であるということを信じるのはおそらく困難であったろう。十・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ノーベル賞を与えられた彼等は科学者として最高の名誉の席につかせられ、学界からおくられる称号、学位の数々は、まるでそういう名誉でキュリー夫妻を飾ることを怠れば、その国々の恥辱となるとでも云いそうな勢でした。もしキュリー夫妻の艱難と堅忍と努力と・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・っていう二種類の称号を与えて優遇しているのを。モスクワの劇団にだけでも「人民芸術家」が十一人ばかりいる。「功績ある芸術家」は四十人以上ある。 例えばモスクワ芸術座のルージュスキーなんか、役柄は西洋の松助みたいなところだが、革命前、アル・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 食うか、くわれるか=バルザックには金、権力、称号が目的、 ∥ フランス○ドイツ の全作品の主人公のタイプ 天才のタイプ 発展小説 修業時代よりマイスターへ ドストイェフスキーの人物が現実の生活と・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・ジェルテルスキーが、上海で始めて彼女に紹介された時、彼女は、何か特種な称号でも云うように、「ええ、私マダム・ブーキンと申しますの、どうぞよろしく」と紅をさした頬で微笑った。髪の黒い、黒い眼のキラキラした痩せぎすの彼女にとって、マダム・・・ 宮本百合子 「街」
出典:青空文庫