・・・そこへ腰を落ち着けて、途中で止めた眠を続けようと思うのである。やっと探り寄ってそこへ掛けようと思う時、丁度外を誰かが硝子提灯を持って通った。火影がちらと映って、自分の掛けようとしている所に、一人の男の寝ている髯面が見えた。フィンクは吃驚して・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
・・・ 私は心臓が変調を来たしたような心持ちでとりとめもなくいろいろな事を思い続けました。――しかしこれだけなら別にあなたに訴える必要はないのです。あなたに聞いていただかなければならない事は、その後一時間ばかりして起こりました。それは何でもな・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫