・・・軽しめ侮べからず。総じて婦人の道は人に従ふに有り。夫に対するに顔色言葉遣ひ慇懃に謙り和順なるべし。不忍にして不順なるべからず。奢て無礼なるべからず。是れ女子第一の勤也。夫の教訓有らば其仰を叛べからず。疑敷ことは夫に問ふて其下知に随ふべし。夫・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・ 総じて私は気持のきっかけや、変化を主にして、考えたり記憶したりする癖があるので、時日や、時日の長さなどは、随分矛盾したり、間違えたり、忘れたりして、少しも正確ではないのです。そういう意味での不正確さは、時日のことばかりに限らず、本・・・ 宮本百合子 「十年の思い出」
・・・が、「然し人間は総じて男女の別なく、いかほど正しい当然な事でも、それをば正当なりと自分からは主張せず出しゃばらずに、どこまでも遠慮深くおとなしくしている風がかえって奥床しく美しくはあるまいか」「もし浮む瀬なく、強い者のために沈められ、滅され・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・それは鋤に寄りかかる癖があるからで、それでまた左の肩を別段にそびやかして歩み、体格が総じて歪んで見える。膝のあたりを格別に拡げるのは、刈り入れの時、体躯のすわる身がまえの癖である。白い縫い模様のある襟飾りを着けて、糊で固めた緑色のフワフワし・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・父はただいわゆる過激思想だけを恐れているのではない。総じて人心の腐敗に対して公憤を抱いているのである。過激思想ももちろんその中に含まれているであろうが、過激思想を退治しようとしている為政者の言行といえどもまたその中に含まれていないのではない・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・の意に解するならば、人間は総じて何ほどかずつは享楽人である。が、特に一つの類型として認められる享楽人は、一定の特性を持ったものでなくてはならない。その特性は、第一に「享楽」すなわち「味わうこと」を他の何ものよりも重んじ、それによって彼の生活・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・これもまた凄さを具象化したものとは言えるであろうが、しかし人の凄さの表情を類型化したものとは言えない。総じてそれは人の顔の類型ではない。能面のこの特徴は男女を現わす通例の面においても見られる。それは男であるか女であるか、あるいは老年であるか・・・ 和辻哲郎 「面とペルソナ」
出典:青空文庫